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C電力会社事件(控訴)

事件の分類
賃金・昇格
事件名
C電力会社事件(控訴)
事件番号
広島高裁 − 平成23年(ネ)第251号
当事者
原告…個人1名、被告…電力会社
業種
電気事業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2013年07月18日
判決決定区分
確認を求める訴えを却下、その他請求を棄却
事件の概要
 X(原告)は1981(昭和56)年4月1日より事務系の従業員として、電気事業を営むY社(被告)に雇用され、2006(平成18)年2月からYの営業所に勤務している女性従業員である。Xは職能等級の昇格、職位の昇進において、女性であることを理由に不当な差別的取扱い(以下、「女性差別」という)を受けて、1)本来あるべきものより低い職能等級及び職位にされているなどとして、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求し、2)さらに過去の一定の時期から現在まで一定の職能等級にあることの確認を求めた。

 第一審では、2)につきいずれも訴えの利益に欠き不適法であるとして、これを却下し、その余の請求をいずれも却下したので、Xが本件を控訴した。
主文
1 訴えのうち、原告が一定の期間主任1級の職能等級にあったことの確認を求める部分、及び一定の期間管理3級の職能等級にあったことの確認を求める部分をいずれも却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 1)につき、確認の訴えにおいては、現在の権利義務関係を対象とせねばならず、過去の権利義務関係を対象とするには、これを確認することが現在の権利義務関係をめぐる紛争の解決にとって適切であるような特段の事情が必要である。そうすると、Xの確認請求については、以上の特段の事情が認められないから、同部分に係る訴えは確認の利益を欠き、不適法な訴えとして却下を免れない。

 2)につき、(1)職能等級の昇格は、人事考査(業績考課、能力考課)により決まるところ、Yの職能等級制度はもとより、人事考査の基準等にも、男性従業員と女性従業員とで取扱いを異にするような定めはない。また、評定基準が作成されたうえでこれが公表されているほか、評定者に女性を登用したり、評定者に対する研修が行われていたりし、人事考査の実施についても、第一次評定者による評価をさらに第二次評定者が再検討し、被評定者にフィードバックされており、評価の客観性を保つ仕組みがとられている。(2)女性従業員と男性従業員との比較についても、同じ男性間にも昇格の早いもの、遅いものがあり、賃金額にも差があるのであって、男女間で層として明確に分離しているということまではうかがわれない。確かに、Yにおいては、Yと同期同学歴の事務系男性従業員について、2008(平成20)年の時点で、主任1級以上の職能等級になっている者の割合(男性90.4%、女性25.7%)、初めて主任1級に昇格した者の年齢(男性36歳、女性41歳)等が異なり、その結果、事務系女性従業員の平均基準労働賃金額も同男性従業員の平均額88.1%にとどまるなど男女差があるものの、(3)以上のような男女差が生じたことについて、女性従業員に管理職に就任することを敬遠したり早期退職する傾向があったり、女性従業員の自己都合退職も少なくなく、1999(平成22)年3月まで効力を有していた旧女性保護法などの事情もうかがわれる。(4)Xは、業務の結果については高く評価されている一方、協力関係向上力、指導力については問題あると評価されていたのであるから、Yが主任1級や管理3級になろうとする従業員に求められる職場の一体感やチームワーク向上に対する能力・成果を具備するに至ってなかったものと認められるのが相当である。(5)また、主任の職位に昇進させかどうかは、人事権の行使として使用者であるYの広範な裁量に委ねられているところ、YがXを主任に昇進させなかったことは、Yの人事権の範囲内で判断されたものといえる。以上より、Xの請求はいずれも理由がなく、主文の通りに判決する。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働経済判例速報2188号3頁。
その他特記事項