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京都市北部クリーンセンター懲戒免職事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント解雇
事件名
京都市北部クリーンセンター懲戒免職事件
事件番号
京都地裁-平成20年(行ウ)第30号
当事者
原告…個人1名、被告…京都市
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
2009年10月22日
判決決定区分
棄却
事件の概要
 X(原告)は京都市Y(被告)の職員として、Yの環境局適正処理施設部管理課担当係長の職にあり、同時にYが設置した京都市北部クリーンセンター関連施設プール(以下、「本件施設」という。)管理運営協会(以下、「本件協会」という。)事務局事務所長の職に従事していた。
 Yは2006(平成18)年12月27日、①本件協会の女性臨時職員に対するセクシュアル・ハラスメント(以下、「セクハラ」という。)行為、②タクシーチケットの私的流用、③物品販売手数料の簿外管理、以上の3点を理由として、地方公務員法29条1項各号によりXを懲戒免職処分(以下、「本件処分」という。)とした。
 ①につき、セクハラ調査委員会の調査報告書(以下、「本件調査報告書」という)によれば、Xは2003(平成15)年3月から2006年8月までの間に、本件協会の女性臨時職員6人に対し、勤務時間中に業務上の指示等を理由に一人ずつ個別に呼び出すなど二人きりの状況で、「やらせろ。」、「女は足だけ広げていればいい。」、「犯すぞ。」等の性的関心に基づく発言や性的交渉を求める発言を相当回数繰り返し、女性職員らに嫌悪感、恐怖感、圧迫感を与え、その中には体調不良となる者もいた。
 ②につき、Xは本件協会所有の有価証券であるタクシーチケットを2006年9月6日、同月7日及び同月9日の3回にわたって私的に使用し、計7590円の業務上の横領行為をしたとされた。
 ③につき、Xは本件協会の決定を経ず、独断で2002(平成14)年6月にプール事業委託業者と物品販売受託契約を締結し、また同年10月以降、自動販売機設置契約を締結し、2006年9月までそれらの販売手数料を簿外管理する等の不適切な事務処理を行ったとされる。
 これに対し、Xは本件処分には理由がなく、仮に懲戒理由があったとしてもXを懲戒免職という本件処分に付するのは重過ぎるものであり、比例原則に反し許されないとして、本件処分の取消を求めて提訴した。
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
 公務員の懲戒処分についての当局の裁量権をめぐる神戸税関事件(最高裁 1977年12月20日判決・民集31巻7号1100頁)の先例を踏まえ、②、③につき、京都市職員の懲戒処分に関する指針上の横領等に匹敵すると評価することに、比例原則に反する等の裁量の逸脱があるとはいえず、懲戒免職処分をしたことに違法な点はない。
 また、①につき、本件調査報告書等によれば、Xが少なくとも1名以上の女性臨時職員に対し、相手の意に反してわいせつな言辞を繰り返したことが認められる。これに対し、Xは被害にあったとする女性臨時職員らがXに恨みをもっており、虚偽の供述をする動機があるため、本件調査報告書に記載された女性臨時職員の供述は信用できない旨を主張するが、X本人の供述のみから本件調査報告書作成過程の事情聴取を受けたすべての女性職員がXに対して恨みの感情を抱いていたとは認め難く、恨みの感情から虚偽の供述をしたと認め得る証拠はない。そして、Xが少なくとも1名の職員の意に反して繰り返しわいせつな言動をしたとの前記認定を左右するには足りない。
 これら懲戒理由に該当する事実を併せて考慮すると、Xを懲戒処免職処分としたことにYの裁量逸脱はなく、本件処分は違法とはならない。
適用法規・条文
地方公務員法29条1項
収録文献(出典)
労働判例1016号27頁
その他特記事項
本件は控訴された。