判例データベース
K市(セクハラ・停職処分)事件
- 事件の分類
- その他
- 事件名
- K市(セクハラ・停職処分)事件
- 事件番号
- 神戸地裁 − 平成27年(行ウ)第31号
- 当事者
- 原告 個人
被告 地方公共団体(K市) - 業種
- 公務(市)
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2016年11月24日
- 判決決定区分
- 請求棄却
- 事件の概要
- 本件は、勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアの女性職員に対して行った不適切な行為(女性従業員の手を取って自分の股間に接触させるなどの行為)を理由に停職6月の懲戒処分を受けたK市(被告)の職員であるX(原告)が,その取消しを求めた事案である。K市の交付した懲戒理由書には「あなたは,平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。また,以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。このことは,公務に対する信用を著しく傷つける行為として地方公務員法第33条に違反する行為であるとともに,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行である。 よって,地方公務員法第29条第1項第1号及び第3号の規定に基づき,懲戒処分として停職6箇月を妥当とする。」と記載されていた。
- 主文
- 1 処分行政庁が平成26年11月26日付けで原告に対してした停職6か月の懲戒処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。 - 判決要旨
- (1)懲戒事由該当性の有無
Xの本件懲戒処分の対象とされた行為は、コンビニエンスストアである本件店舗において,客であり50代半ばの男性であるXが,20代前半の女性従業員の手をとって自分の股間に軽く接触させたというものであり,公衆が出入りすることができる公共の場所において人に対してされた「不安を覚えさせるような卑わいな言動」ということができるから,迷惑防止条例3条2項に違反する行為である。このような刑事上罰せられるべき行為は,職員の職の信用を傷つけ,職員の職全体の不名誉となるものであり,地公法33条に違反するとともに,全体の奉仕者としてふさわしくない非行といえる。
(2)裁量権の逸脱・濫用の有無
Xの行為のうち、女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動は(行為1)、軽微な非違行為であるとはいえないから,本件処分につき指針上の処分の標準例に従い懲戒処分のうち停職を選択した処分行政庁の判断が裁量権を逸脱・濫用するものであったとはいえない。
処分行政庁が懲戒処分として停職を選択した場合,1日以上6月以下という非常に幅の広い期間の中から非違行為に見合う停職期間を選択することになる。Xに対し処分行政庁は上限である6月を選択した。この結果,本件処分は懲戒処分の中でも免職に次いで重い処分となっており,6か月間いかなる給与も支給されないこととなったXの不利益はきわめて大きく,その生活に対する影響も大きい。そこで,この選択の結果が重すぎるものとして裁量権の逸脱・濫用となるのではないかが問題となる。
Xの行為1がそれ自体悪質なものであること,原告が前から本件店舗において迷惑行為(行為2)をしてきたこと,反省の態度が十分でないことを勘案しても,停職6か月という懲戒処分は重すぎるといわざるをえず,処分に至った経緯もふまえると,社会観念上著しく妥当を欠くというべきである。したがって本件処分は裁量権を逸脱・濫用するものであり,違法である。
原告は懲戒事由に該当する行為1を行ったが,それに対する懲戒処分として停職6か月は重すぎる。本件処分には裁量権の逸脱・濫用の違法があるから取消しを免れない。処分行政庁は改めて原告に対し裁量権を適切に行使して行為を理由とする懲戒処分を行うべきである。 - 適用法規・条文
- 地方公務員法第29条1項1号,同3号、地方公務員法第33条
- 収録文献(出典)
- 労働判例1227号30頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された.
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪高裁 − 平成29年(行コ)第3号 | 控訴棄却 | 2017年04月26日 |
最高裁第三小− 平成29年(行ヒ)第320号 | 破棄自判(原判決破棄・一審決裁取消し) | 2018年11月06日 |