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K市(セクハラ・停職処分)控訴事件

事件の分類
その他
事件名
K市(セクハラ・停職処分)控訴事件
事件番号
大阪高裁 − 平成29年(行コ)第3号
当事者
控訴人 地方公共団体(K市)(1審被告)
被控訴人 個人(1審原告)
業種
公務(市
判決・決定
判決
判決決定年月日
2017年04月26日
判決決定区分
控訴棄却
事件の概要
本件は、勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアの女性職員に対して行った不適切な行為(女性従業員の手を取って自分の股間に接触させるなどの行為)を理由に停職6月の懲戒処分を受けたK市(控訴人、1審被告)の職員であるX(被控訴人、1審原告)が,その取消しを求めた事案である。K市の交付した懲戒理由書には「あなたは,平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。また,以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。このことは,公務に対する信用を著しく傷つける行為として地方公務員法第33条に違反する行為であるとともに,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行である。 よって,地方公務員法第29条第1項第1号及び第3号の規定に基づき,懲戒処分として停職6箇月を妥当とする。」と記載されていた。 
1審は、Xの行為の懲戒事由該当性を認めつつ、それに対する懲戒処分として停職6か月は重すぎるとして、本件処分には裁量権の逸脱・濫用の違法があるから取消しを免れないとした。K市が控訴した。
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
判決要旨
当裁判所も,被控訴人の本件請求は,理由があるからこれを認容するのが相当であると判断する。
 以上に検討したとおり,Xの行為1(注:女性従業員Aの手を引き寄せてはXの股間を触らせる行為)はそれ自体悪質である上,Xは,行為1の前から,本件店舗で働く女性従業員らを不快にさせる不適切な言動をしていたもので(行為2),これも併せると,行為1の態様は一層悪質である。また,Xの行為1が社会に与えた影響は小さくなく,それにもかかわらず,その反省の態度は不十分である。
 しかし,他方で,行為1は,Xが,以前からの顔見知りであるAに対して,これまでのように飲み物を買い与える過程でした行為であり,Aは,Xに左手首を引き寄せられ,その指先を股間に触れさせられる前までは,手や腕を絡められるなどの身体的接触につき,渋々ながらも同意していたと認められること,Aは,新聞報道がされて事案の概要が公になった後も,Xの告発や処罰は望んでおらず,この点は,本件店舗のオーナーも同様であったこと,これもあって,Xは,捜査機関の捜査の対象とすらされておらず,当然のことながら,何らの刑罰を受けていないこと,行為1より前に,Xが常習として行為1と同様な行為をしていたと認めるまでの証拠はないこと,Xの行為1が社会に与えた影響は,小さくないとはいえ,公権力の行使に当たる公務員が同様の行為をした場合ほど,大きいともいえないこと,Xは,K市において過去に懲戒処分を受けた事実はないことが指摘できる。
 以上の事情を勘案すると,行為1の態様が悪質であり,Xの反省の態度が不十分であるなどの前記事情を踏まえても,Xを停職6か月とした本件処分は,重きに過ぎるといわざるを得ず,社会観念上著しく妥当を欠くというべきである.
適用法規・条文
地方公務員法第29条1項1号,同3号、地方公務員法第33条
収録文献(出典)
労働判例1227号27頁
その他特記事項
本件は上告された。