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K市(セクハラ・停職処分)上告事件

事件の分類
その他
事件名
K市(セクハラ・停職処分)上告事件
事件番号
最高裁第三小− 平成29年(行ヒ)第320号
当事者
上告人 地方公共団体(K市)(1審被告、控訴人)
被上告人  個人(1審原告、被控訴人)
業種
公務(市)
判決・決定
判決
判決決定年月日
2018年11月06日
判決決定区分
破棄自判(原判決破棄・一審決裁取消し)
事件の概要
本件は、勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアの女性職員に対して行った不適切な行為(女性従業員の手を取って自分の股間に接触させるなどの行為)を理由に停職6月の懲戒処分を受けたK市(被告)の職員であるX(原告)が,その取消しを求めた事案である。K市の交付した懲戒理由書には「あなたは,平成26年9月30日に勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。また,以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。このことは,公務に対する信用を著しく傷つける行為として地方公務員法第33条に違反する行為であるとともに,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行である。 よって,地方公務員法第29条第1項第1号及び第3号の規定に基づき,懲戒処分として停職6箇月を妥当とする。」と記載されていた。
主文
原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
判決要旨
原判決破棄、第1審判決を取り消す。
(1)行為1について、XとAは客と店員の関係にすぎないから,Aが終始笑顔で行動し,身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとして,これをXに有利に評価することは相当でない。
 A及びコンビニエンスストアオーナーがXの処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。さらに,身体的接触を伴うかどうかはともかく,Xが以前から当該コンビニエンスストアの従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており(行為2),これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたことは,本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない事情というべきである。
 行為1が勤務時間中に制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道され,A市が記者会見をしたことからすると,行為1により,A市の公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり、社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。
 行為1が,客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた厳しく非難されるべき行為であって,Aの公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものであり,また、Xが以前から同じ店舗で不適切な言動(行為2)を行っていたなどの事情に照らせば,本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえない。
適用法規・条文
地方公務員法第29条1項1号,同3号、地方公務員法第33条、K市職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例(昭28K市条例7号)4条
収録文献(出典)
労働判例1227号21頁
その他特記事項
なし。